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大学の話

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大学に入学した春: ここから遠く

このブログはRSSを登録しており、いつも読んでいる。今日の投稿記事で大学の話がされていたから、私も大学の頃の話をしよう。

12年前、私は、北九州市立大学法学部に入学した。祖母の家に居候して通うことになった。
高校時代は生徒会活動や部活動に精を出しており、あまり勉強しなかった。だから北九州市立大学でも、たいへん満足していた。国立でも私立でもない、公立の中途半端感が面白かった。
地元の神奈川大学にも合格していたが、私立と公立では学生数が大きく異なるし、学費にも差がある。こぢんまりとした大学のほうが自分には向いていると考えた。

大学に入学して最初に感じたのは、キャンパスが狭いことだった。競馬場と自衛隊に挟まれ、窮屈と思いきや、講義の移動が楽で良かった。
本館のビルを除いて講義棟は古く、サークル会館は特に古くて汚かった。かつて学生運動の拠点だったらしいというサークル会館は、今やおとなしいサークル活動の場に変わっていたが、学生自治が確立している良い場だった。おそらく日本一、学生に自由のある大学だったと思うし、今でもそうだろう。

ほどほどの学生数に、素晴らしい教授陣、そして蔦が絡まる雰囲気の良い図書館。
ここで4年間思う存分学ぶぞ、と強く感じた。
結果的に3年間で卒業単位を取得して中退し、飛び級で大学院へ進学したものの、多くの経験をし、多くの出会いがあった。
学問を究めるのも、サークルに力を入れるのも、友人と遊ぶのも、大学ならなんでもありだ。
大学生活は人生で一番、「なんでもできる」時間だったのだと、今になって思う。
これから大学に進まれる方には、思う存分、自分を試してほしいと願うのである。

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2014年12月14日施行の総選挙で零票確認をした

投票証明書

去る総選挙の日。
早朝、父と共に投票所へ。いわゆる「零票確認」をするためです。

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地元の中学校体育館へ。

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体育館から早朝の校舎を眺める。

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係の方が看板を掲示。

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小選挙区の投票用紙。

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小選挙区の投票箱。写真をバシバシ撮ります。

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施錠されます。

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比例代表の投票箱。

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最高裁判所裁判官国民審査の投票箱。

貴重な経験をさせていただき、嬉しく思います。

2013(平成25)年11月20日最高裁判所大法廷判決について

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1.2013年11月20日、最高裁判所大法廷にて、いわゆる一票の格差の問題に関する判決が下されました。
裁判所のホームページが公開している判決文PDFへのリンクは、以下のとおり。

・平成25(行ツ)209 選挙無効請求事件 平成25年11月20日 最高裁判所大法廷 判決 破棄自判
・平成25(行ツ)226 選挙無効請求事件 平成25年11月20日 最高裁判所大法廷 判決 破棄自判

私は、一人一票実現国民会議のサポーターというか、ただの写真好きというか、そんな気分でパレードに参加し裁判を傍聴しました。
記録として残すため判決理由と新聞記事を紹介し、若干の感想を記しておきます。

2.判決理由

(1)多数意見
「本件選挙は……平成21年選挙時に既に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた本件選挙区割りの下で再び施行されたものであること……選挙区間の較差は平成21年選挙時よりも更に拡大して最大較差が2.425倍に達していたこと等に照らせば,本件選挙時において,前回の平成21年選挙時と同様に,本件選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ない」

「衆議院議員の選挙における投票価値の較差の問題について,当裁判所大法廷は,これまで,①定数配分又は選挙区割りが前記のような諸事情を総合的に考慮した上で投票価値の較差において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か,②上記の状態に至っている場合に,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとして定数配分規定又は区割規定が憲法の規定に違反するに至っているか否か,③当該規定が憲法の規定に違反するに至っている場合に,選挙を無効とすることなく選挙の違法を宣言するにとどめるか否かといった判断の枠組みに従って審査を行ってきた。こうした段階を経て判断を行う方法が採られてきたのは,単に事柄の重要性に鑑み慎重な手順を踏むというよりは,憲法の予定している司法権と立法権との関係に由来するものと考えられる。すなわち,裁判所において選挙制度について投票価値の平等の観点から憲法上問題があると判断したとしても,自らこれに代わる具体的な制度を定め得るものではなく,その是正は国会の立法によって行われることになるものであり,是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しており,上記の判断枠組みのいずれの段階においても,国会において自ら制度の見直しを行うことが想定されているものと解される。換言すれば,裁判所が選挙制度の憲法適合性について上記の判断枠組みの各段階において一定の判断を示すことにより,国会がこれを踏まえて所要の適切な是正の措置を講ずることが,憲法の趣旨に沿うものというべきである。このような憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に照らすと,上記①の段階において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている旨の司法の判断がされれば国会はこれを受けて是正を行う責務を負うものであるところ,上記②の段階において憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かを判断するに当たっては,単に期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったといえるか否かという観点から評価すべきものと解される」

「本件選挙前に成立した平成24年改正法の定めた枠組みに基づき,本来の任期満了時までに,区画審の改定案の勧告を経て平成25年改正法が成立し,定数配分の上記0増5減の措置が行われ,平成22年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口較差を2倍未満に抑える選挙区割りの改定が実現されたところである。このように,平成21年選挙に関する平成23年大法廷判決を受けて,立法府における是正のための取組が行われ,本件選挙前の時点において是正の実現に向けた一定の前進と評価し得る法改正が成立に至っていたものということができる」

「0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県については……旧区割基準に基づいて配分された定数がそのまま維持されており,平成22年国勢調査の結果を基に1人別枠方式の廃止後の本件新区割基準に基づく定数の再配分が行われているわけではなく,全体として新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が十分に実現されているとはいえず,そのため,今後の人口変動により再び較差が2倍以上の選挙区が出現し増加する蓋然性が高いと想定されるなど,1人別枠方式の構造的な問題が最終的に解決されているとはいえない。しかしながら,この問題への対応や合意の形成に前述の様々な困難が伴うことを踏まえ,新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備については,今回のような漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも,国会の裁 量に係る現実的な選択として許容されているところと解される。また,今後の国勢調査の結果に従って同条に基づく各都道府県への定数の再配分とこれを踏まえた選挙区割りの改定を行うべき時期が到来することも避けられない」

「本件選挙自体は,衆議院解散に伴い前回の平成21年選挙と同様の選挙区割りの下で行われ,平成21年選挙より最大較差も拡大していたところではあるが,本件選挙までに,1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項の規定が削除され,かつ,全国の選挙区間の人口較差を2倍未満に収めることを可能とする定数配分と区割り改定の枠組みが定められており,前記……において述べた司法権と立法権との関係を踏まえ,前記のような考慮すべき諸事情に照らすと,国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず,本件において憲法上要求される合理的期間を徒過したものと断ずることはできない」

「本件選挙時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,前回の平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない」

「投票価値の平等は憲法上の要請であり,1人別枠方式の構造的な問題は最終的に解決されているとはいえないことは前記のとおりであって,国会においては,今後も,新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があるというべきである」

(2)意見(鬼丸かおる)
「私は,衆議院議員の選挙における国民の投票価値につき,憲法は,できる限り1対1に近い平等を基本的に保障しているものと考えるものである」

「特に衆議院議員の選出に当たっては,衆議院議員の権能,任期,特に解散制度の存在に鑑み,選挙の施行ごとに,当該選挙の時点における的確な国民の意思を反映することが求められていると解されるところ,衆議院議員を選出する権利は,選挙人が当該選挙施行時における国政に関する自己の意見を主張するほぼ唯一の機会であって,国民主権を実現するための国民の最も重要な権利であるが,投票価値に不平等が存在すると認識されるときは選挙結果が国民の意見を適正に反映しているとの評価が困難になるのであって,衆議院議員が国民を代表して国政を行い民主主義を実現するとはいい難くなるものである。以上の理由により,憲法は,衆議院議員の選挙について,国民の投票価値をできる限り1対1に近い平等なものとすることを基本的に保障しているものというべきである」

「多数意見は,平成6年の制度改正後の選挙制度の下での区割りにおいて,投票価値の最大較差が2倍以上とならないようにすることを基本としていることに合理性を認めているが,私は既述のとおり,できる限り投票価値を1対1に近づけるべきであると考えるものであり,当初からこれを目指したものとはいえない上記作成方針は憲法上の要請に合致するものとはいえないと解するものである」

「平成13年策定の上記作成方針に基づいて選挙区割りを定めて選挙を実施すれば,憲法の投票価値の平等の要求に反する事態を招来することは避けられないというべきであったところ,加えて,多数意見も合理性を失ったとする1人別枠方式 含む区割基準に基づいて選挙区割りが定められたことによって,投票価値の最大較差が,前回の平成21年選挙時には2.304倍になり,本件選挙時には更に拡大して2.425倍にまで至ったものであるから,本件選挙時の選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態であったものというほかはない」

(3)反対意見

ア、大谷剛彦
「平成21年に実施された前回の選挙に関する平成23年大法廷判決の判示は多数意見……のとおりであるところ,同判決は,遅くとも前回の選挙時には本件旧区割基準及び本件選挙区割りは違憲状態に至っていたとし,合理的是正期間の法理を適用して違憲の判断を控えた上で,是正方策の照準も示して違憲状態の速やかな解消を求めている。そして,平成22年10月に実施された国勢調査の結果は,いずれも投票価値の較差の拡大を示しており,また,区画審としては国勢調査に基づく選挙区の改定に関する勧告の期限を平成24年2月に迎えたが,各都道府県への定数配分の枠組みも定まらないため,勧告がないまま期限を経過し,事態は 多数意見……のとおり推移した。この時点までに,1人別枠方式を廃し,旧区画 審設置法3条1項による定数配分の枠組みが定められ,選挙区の改定の勧告に至っていれば,漸次的な改定であるにせよ平成25年改正後の新区割規定のような改定は,事柄の性質上必要な作業的,手続的な期間を考慮してもなお実施が可能であったと考えられる」

イ、大橋正春
「本件では,1人別枠方式を廃止する法改正が成立したのは平成24年11月16日(各都道府県の小選挙区数の0増5減も同時に成立)であり,平成23年大法廷判決から約1年8か月が経過している。そして,同改正に基づく区割り改定案を区画審が勧告したのはその約4か月後の平成25年3月28日であり,同勧告に基づく区割規定の改正がされたのはその3か月後の6月24日である。すなわち,1人別枠方式の廃止から約7か月で区割規定の改正が行われており,1人別枠方式を廃止する法改正作業が平成23年大法廷判決言渡し直後から真摯に行われていたとするならば,本件選挙までの約1年9か月の間に区割規定の改正は十分に可能であったものと考えられ,この間に違憲状態を是正しなかったことについて合理的期間を経過していると評価することが,選挙制度の改正を含めてその仕組みの具体的決定 についての立法府の裁量権を侵害するものということはできない」

「平成23年大法廷判決言渡し時点では,既に平成22年国勢調査の結果による人口が官報で公示されており,区画審は旧区画審設置法4条1項により平成24年2月25日までに区割り改定案を勧告すべきものとされていたが,1人別枠方式の廃止がない以上は平成23年大法廷判決の指摘する憲法の投票価値の平等の要求に反することのない区割り改定案の策定は不可能であったのであるから,立法府としては喫緊の課題として1人別枠方式の廃止を優先的に実行する憲法上の義務を国民に負うことになったということができる。しかるに,平成23年大法廷判決言渡し後約7か月後の平成23年10月19日になってようやく各党協議会での議論が開始され,その約1年1か月後の平成24年11月16日になって1人別枠方式を廃止する改正法が成立したのであり,この間の立法府の活動を見ても,憲法適合性回復のための立法作業の遅れを正当化する事情を認めることはできない」

ウ、木内道祥
「選挙制度の改正について国会には広範な裁量権があるが,現在問題となっている投票価値の不平等については,前記のように既に平成23年大法廷判決において, その主要な原因である1人別枠方式の廃止と新基準による選挙区割規定の改正という,行うべき改正の方向が示されており,改正の内容についての裁量権はこの範囲に限定されている。また,改正の時期についても,できるだけ速やかに行われるべきは当然である。すなわち,1人別枠方式を廃止し旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正するについて複数の案を採りうるとして,そのいずれを選ぶかについては国会の裁量に委ねられているが,その改正をいつまでに行うかについては,通常は,次回選挙に間に合うように改正を行う必要があり,次回選挙の時期が迫っていて作業が技術的に間に合わないという特段の事情があれば,次々回の選挙までに改正を行うべきである。しかるに,本件において,前回選挙から本件選挙までの間に,上記の特段の事情があったとはうかがわれない」

「国会が憲法上要求される合理的期間内における是正を行ったか否かの判定は,国会が立法府として合理的に行動することを前提として行われるべきである。本件選挙の実施までには平成23年大法廷判決から1年9か月の期間があり,この期間は,区割基準の改正を経て具体的な選挙区割りの決定に至るまでには二段階の法改正が必要であることを考慮しても,国会が立法府として合理的に行動する限り,前記のとおり同判決において方向を指し示された改正の作業を行うための期間として不足するものとはいえない」

3.新聞記事

(1)12年衆院選は違憲状態 最高裁判決、一票の格差訴訟(朝日新聞2013年11月20日20時47分)
「一票の格差」が最大2・43倍だった昨年12月の衆院選をめぐり、二つの弁護士グループが「選挙区によって投票価値が異なるのは憲法違反だ」と選挙無効を求めた計16件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允〈ひろのぶ〉長官)は20日、「違憲状態」との統一判断を示した。選挙無効の請求は退けた。

各高裁判決は16件中14件を「違憲」と判断。うち2件は同種訴訟で初の「選挙無効」に踏み込んだ。だが最高裁は今回、国会による定数の小幅是正を「一定の前進」と肯定的に評価し、違憲の一歩手前の「違憲状態」にとどめた。高裁段階から大きく後退したことで、国会の格差是正の動きが停滞する可能性がある。

最高裁は最大格差が2・30倍だった2009年衆院選をめぐる11年3月の判決で、区割りを「違憲状態」と指摘。各都道府県にあらかじめ1議席ずつ割り振り、地方に手厚い「1人別枠方式」の廃止を求めた。

国会は昨年の衆院解散直前、駆け込みで同方式の条文を削除。「0増5減」の緊急是正法を成立させたが、区割り改定は間に合わず、09年と同じ区割りで選挙が実施された。今回の裁判ではこの対応への評価が焦点となった。

今回の大法廷判決はまず、昨年の区割りは09年と同じであり、「違憲状態」と判断した。一方で、直前に緊急是正法が成立し、さらに本来の衆院の任期末(今年8月)までに「0増5減」に基づく新たな区割りを定める法案が成立した点を重視。昨年の選挙時点で「是正に向けた一定の前進と評価できる法改正がされた」として、違憲とは断定できないと結論づけた。

ただ、新区割りでも1人別枠方式に基づく割り振りが抜本的には見直されておらず、「同方式の構造的な問題が最終的に解決されてはいない」とも指摘。国会に是正の取り組みを続けていくよう注文をつけた。

裁判官14人中11人の多数意見。3人が「違憲」とする反対意見を述べた。緊急是正法の成立時に内閣法制局長官を務めていた山本庸幸(つねゆき)裁判官は、審理への参加を辞退した。衆院選の同種訴訟で最高裁が「違憲状態」と判断したのは4度目。小選挙区制度下では2度目となる。

■判決骨子

・昨年の衆院解散直前、「1人別枠方式」の条文を削除し、定数を「0増5減」する法律が成立していた。さらに、本来の任期満了(今年8月)より前の今年6月には、それに基づく新たな区割りが定められた。昨年の衆院選時点で、是正に向けた一定の前進と評価できる法改正がされていた

・以上のことから、昨年の衆院選の区割りは「違憲状態」だったものの、国会が合理的期間内に是正しなかったとはいえず、「違憲」とまではいえない

・ただ、新たな定数配分も、1人別枠方式の構造的な問題が最終的に解決されているとはいえず、国会は是正に向けた取り組みを着実に進める必要がある

(2)1票の格差:昨年衆院選「違憲状態」…最高裁判決(毎日新聞2013年11月20日22時19分)
「1票の格差」が最大2.43倍だった2012年12月の衆院選を巡り、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた16件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允(ひろのぶ)長官)は20日、「投票価値の平等に反する状態だった」と述べ、小選挙区の区割りを「違憲状態」と判断した。一方で「段階的に見直しを重ねて是正することも国会の裁量だ」と指摘し、請求は棄却した。選挙無効を含む14件の違憲判決が出た高裁段階と比べ、国会に対する厳しい姿勢は後退し、違憲の一歩手前でとどめた。

◇選挙無効は棄却 0増5減は「前進」

大法廷は11年3月、最大格差が2.30倍だった09年選挙を違憲状態とした上で、47都道府県に1議席ずつ割り振って残りを人口比で配分する「1人別枠方式」の廃止を求めた。12年11月の衆院解散直前に同方式を廃止し、小選挙区を「0増5減」する選挙制度改革関連法が成立したが、区割りが間に合わず、格差が拡大したまま選挙が行われた。一方で、今年6月に決まった新区割りでは、格差は1.998倍(10年国勢調査の人口ベース)となり、法律(衆院選挙区画定審議会設置法)で求められる「2倍未満」となった。

大法廷はこうした経緯について「選挙前に是正の実現に向けた一定の前進と言える法改正が成立した」と評価。「今後、格差2倍以上の選挙区が増える可能性が高く、1人別枠方式の構造的問題が最終的に解決したとは言えないが、段階的に見直しを重ねることも許容される」と述べ、国会の幅広い裁量権を認めた。

さらに、大法廷は「違憲」か「違憲状態」かを分ける「是正に必要と認められる期間(合理的期間)を経過したか否か」の判断指針に初めて言及。「期間の長短だけでなく、是正措置の内容や検討事項などの事情を総合考慮すべきだ」と指摘し、昨年の衆院選時点で合理的期間を過ぎていたとは言えないとした。

違憲状態と結論づけたのは竹崎裁判長ら11人。大谷剛彦裁判官ら3人は「選挙無効とはしないが違憲だ」と反対意見を述べた。関連法の国会審議の際に内閣法制局長官だった山本庸幸(つねゆき)裁判官は審理に加わらなかった。

(3)1票の格差:安倍首相「厳粛に受け止める」…最高裁判決(毎日新聞2013年11月20日22時01分)
安倍晋三首相は20日、「1票の格差」をめぐり昨年12月の衆院選を違憲状態とした最高裁の判断を受け「判決を厳粛に受け止めている。これから判決内容を精査していきたいと思っている」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。

(4)昨年衆院選「1票の格差」は違憲状態…最高裁(読売新聞2013年11月20日20時35分)
「1票の格差」が最大2・43倍だった昨年12月の衆院小選挙区選は違憲だとして、弁護士グループが選挙無効(やり直し)を求めた16件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允ひろのぶ長官)は20日、区割りを「違憲状態」とする統一判断を示した。

判決は、格差是正に向けた国会の取り組みを「一定の前進」と評価して「違憲」の判断は避けたが、「格差が生じる構造的な問題は解決していない」として抜本改革を求めた。選挙無効の請求は棄却した。

大法廷は、国会が是正を怠ったかどうかを判断する際、格差是正に要する期間だけを基準とすべきではないとする初判断も示した。

1994年に導入された小選挙区制について、最高裁が違憲状態と判断するのは、2009年選挙に続き2回目。裁判官14人のうち、竹崎長官ら11人が「違憲状態」、3人が「違憲」の反対意見を述べた。内閣法制局長官を務め、格差是正の国会審議に関与した山本庸幸つねゆき裁判官は審理から外れた。

(5)司法の警鐘、響かぬ国会 1票の格差「違憲状態」(日本経済新聞2013年11月21日01時49分)
最大2.43倍だった2012年衆院選を最高裁が「違憲状態」と判断した。「無効」や「違憲判決」が相次いだ各地の高裁判決ほどの厳しさではなかったが、最高裁は国会に、現状は不平等な状態であり、是正に向けた努力が必要と指摘した。司法判断が出るたびに、各党や議員の衝突を最小限に抑えるための場当たり的な対応を繰り返すだけでは限界を迎えている。

安倍晋三首相は20日、首相官邸で記者団に最高裁判決を「厳粛に受け止めている。判決内容を精査していきたい」と述べた。

最高裁が「違憲」に踏み込まなかった最大の理由は、衆院小選挙区を「0増5減」する改正公職選挙法が6月に成立したことだ。最大格差は2010年の国勢調査時点で、違憲判断の目安とされる2倍未満だった。

■小幅手直し限界

こうした小幅の手直しでは、頻繁な人口の移動には対応できない。日本経済新聞社が今年3月末の住民基本台帳人口をもとに試算したところ、人口が最も多い兵庫6区(伊丹市など)と最少の宮城5区(石巻市など)の格差はすでに2.097倍。全国9選挙区で2倍以上になっている。

問題は47都道府県に1議席ずつを配分した後、残りを人口比例で議席を割り振る「1人別枠方式」だ。09年衆院選を「違憲状態」とした11年3月の最高裁判決は同方式の是正を求めていた。

国会は関連法から「1人別枠方式」を削除したが、人口最少の鳥取県の議席が2のままのため、実質的には同方式を温存しているとの見方がある。民主党の岡田克也最高顧問は「次の衆院選は1人別枠方式をなくした新たな区割りで実施すべきだ」と訴えたが、自民党の細田博之幹事長代行は今回の判決により「民主党の主張は否定された」と強調する。

各都道府県の人口比に忠実な区割りにするには、地方から都市部に大幅に議席を配分しなおす必要がある。片木淳早大教授(選挙制度論)の試算によると、10年国勢調査人口を基に衆院小選挙区の定数295を単純な人口比例にした場合、さらに「18増18減」が必要だ。

「0増5減」でさえ、結果的には昨年11月の野田佳彦首相(当時)の衆院解散と引き換えだった。今回の結果は「拍子抜けした」(民主党幹部)というのが与野党の本音で、司法の警鐘が響く機運は乏しい。

■3つの議論混在

難しいのは「1票の格差」是正、選挙制度のあり方の見直し、定数削減の3つの議論が混在していることだ。現職議員の政治生命を左右する区割りの見直しは最も抵抗が強い。与野党の議論は「身を切る改革」をアピールしやすい定数削減や、理想論を展開しやすい制度改革が優先され、混乱を助長している。

伊吹文明衆院議長は20日、国会内で記者団に「完全比例代表制度を導入しないと1票の格差はなくならない」と指摘。そのうえで「選挙制度は各党で立ち位置が違う。第三者に任せるという決断をしない限り決着しない」と強調した。日本維新の会の橋下徹共同代表も「第三者機関をつくって決めるべきだ」と語った。

(6)原告、「無効」認定なしを批判 1票の格差「違憲状態」(日本経済新聞2013年11月21日01時43分)
「後退している」「流れを変えた」。昨年の衆院選の1票の格差について「違憲状態」とした20日の最高裁大法廷判決。選挙のやり直しを認めない結論に、原告の弁護士らからは批判の声が相次いだ。一方で、最高裁が2回連続して衆院選を「違憲状態」と明言、国会が引き続き是正に取り組むことも要請した点などを評価する声もある。

「原告の請求を棄却する」。午後3時の最高裁大法廷。裁判長の竹崎博允最高裁長官が判決を読み上げると、原告の山口邦明弁護士らはぼうぜんとした表情で法壇を見つめた。約160人の傍聴人でほぼ埋まった法廷は、静まり返ったままだった。

閉廷後、東京・霞が関で記者会見した山口弁護士は「(2009年衆院選についての)前回判決より後退している。がっかりした」と繰り返した。

今年3月に言い渡された16件の高裁判決のうち、14件が「違憲」か「違憲・無効」だった。この日、最高裁が「無効判決」まで踏み込むことを期待していただけに、金尾哲也弁護士は「またもや国会の違憲行為を追認し、(相次いだ違憲判決の)流れを変えてしまった。何らかの政治的意図があったのではないか」などと落胆の表情を浮かべた。中田大弁護士は「違法な選挙を是正できない司法権は、海外から司法リスクがある国とみられるのではないか」との懸念を示した。

続いて記者会見した別の原告グループの升永英俊弁護士は「判決は不十分だが、違憲状態を明言したことには極めて高い点数をつける」と一定の評価を示した。

09年衆院選を違憲状態とした前回大法廷判決では、合憲とした裁判官が1人いたが、今回は合憲判断はゼロ。伊藤真弁護士は「特定秘密保護法など重大な法案を審議している国会議員が、国民を正当に代表していないと明確に指摘した」と力を込めた。

判決が「裁判所が違憲状態と判断すれば、国会は是正義務を負う」と指摘したことについても言及。黒田健二弁護士は「初めて立法権の責務を明確に宣言した」と評価した。

(7)是正に熱意薄い政府・与党 野党は依然バラバラ(産経新聞2013年11月21日00時48分)
昨年12月の衆院選を「違憲状態」とした最高裁の判決を受け、安倍晋三首相は20日、官邸で記者団に「判決を厳粛に受け止めている。これから判決内容を精査したい」と語った。ただ判決が、直ちに選挙制度改革を必要とする「違憲」とならなかったことで政府・与党の制度改正に向けた熱意は薄い。抜本改革を叫ぶ野党も具体案はバラバラのままで、実現に向けた戦略を欠いているのが実情だ。(小田博士、村上智博)

「読めば読むほど味の出る良い判決だ」

自民党の細田博之幹事長代行は20日夕、党本部で記者団に笑みを浮かべた。

最高裁は「投票価値が合理的期間内に是正されなかったとはいえない」と判断。選挙区定数を「0増5減」させる緊急是正法などの国会側の取り組みに一定の評価を下したからだ。

細田氏は得意顔で「憲法違反ではないが、一票の格差が2倍を超えないように注意しろということだ」と判決文を解説する余裕を見せた。

与党側は「予想した通りだ」(自民党幹部)、「思ったより穏当だった」(公明党幹部)などと安堵(あんど)の表情を見せる。最高裁判決が選挙区定数「0増5減」の改革を否定する「違憲」となった場合には、早急に与野党協議を始め、抜本改革の成案を得なければならなかったためだ。

これに対し、野党側は選挙制度改革の実現に向け攻勢を強める考えだ。民主党の岡田克也政治改革・国会改革推進本部長は20日、「最高裁の注文を真摯(しんし)に受け止め、一票の価値の平等化をはかる」とし、選挙区区割りの全面的な見直しを主張した。

とはいえ、野党の足並みはそろっていない。民主党は10月以降、他の野党を差し置く形で、自公両党と3党協議を進めている。日本維新の会などからは「立法府全体で議論すべきだ」(松野頼久国会議員団幹事長)と民主党への不快感が漏れる。改革の具体案でも、民主党や維新の会が現行制度をベースとした定数削減を求める一方、みんなの党や共産党は小選挙区制廃止を求めている。

制度改革実現の転機となりうるのは来年4月の消費税増税だ。「国会議員の身を切る改革」として定数削減を求める世論が巻き起こる可能性もある。そもそも、首相は衆院解散が決まった昨年11月の党首討論で定数削減を約束している。

今後の政治日程では、平成28年7月の衆参ダブル選挙が予想されている。現行制度をベースに改革する場合でも、選挙区定数を削減するのであれば、さらなる区割り改定作業は必要だ。その後の周知期間などを踏まえると、遅くとも1年前となる27年夏頃には法改正をしなければならない。

自民、公明、民主の3党は22日に今後の対応を協議する。ただ、判決に対する受け止め方は各党の思惑を反映して大きく割れており、議論が進展する兆しはない。

「第三者か、しかるべきところに任せる決断をしない限り、決着はつかない」。伊吹文明衆院議長は20日の記者会見で、各党の党利党略にこうくぎを刺した。

(8)12年衆院選「違憲状態」、県内原告国会改善「期待できず」 1票の格差判決/神奈川(神奈川新聞2013年11月20日)
「1票の格差」が2・43倍だった昨年の衆院選をめぐる全国訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は20日、小選挙区の区割りを「違憲状態」と判断した。議員定数を「0増5減」した格差是正策で一定の前進があったとして「違憲」には踏み切らず、選挙無効を求めた原告側の弁護士グループの訴えを退けた。

◇◆◇

原告の一人で、神奈川15区について選挙無効を求めていた中久木邦宏弁護士(73)=茅ケ崎市=は「とにかく残念」と選挙無効の請求を退けた判決内容に怒りをあらわにする。

判決では、2011年3月に最高裁が09年選挙を違憲状態と判断した後、翌年12月の衆院選までの1年9カ月で格差が是正されなかったことについて、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない」との判断を示した。中久木弁護士は「1票の格差の問題については、11年以前から何度も繰り返し指摘されてきた。にもかかわらず、是正できなかったことに同情するとはとんでもない」と憤る。

判決は、国会にさらなる格差是正を求めてもいるが、「この判決内容で国会が動くとは期待できない」と失望する。

「1票の格差」をめぐっては、今年7月の参院選についても神奈川選挙区の選挙無効を求める訴訟を東京高裁に起こしているが、「今回の判決が参院選の訴訟にも影響するのではないか」と不安を口にした。

川崎市選挙管理アドバイザーで市町村職員中央研修所客員教授(選挙担当)の小島勇人さんも「二度も続けて最高裁が違憲状態としたのは、選挙制度は有権者のためにあるという視点を全く忘れ、損得にとらわれ自らの土俵のあり方を決められない政治への強い怒りであると思う」。

繰り返し浮き彫りになる「政治の怠慢」が有権者の政治に対する信頼を損なわせ、「選挙管理委員会がどんなに声を張り上げても、投票意欲は減退し、投票率の低下に歯止めがかからないのではないか」とみる。

衆院選小選挙区定数を「0増5減」する区割り法により、川崎市内の選挙区では全国で2番目に1票の価値が軽かった神奈川10区(川崎、幸、中原区)が区割り見直しの対象になったが、「局地的な調整では意味がない。国会議員は、法の下の平等をうたう憲法の順守を肝に銘じ、抜本的な格差是正に早急に取り組んでほしい」と注文した。

4.感想
(1)判決について
・一人一票の原則を明確に記した鬼丸かおる裁判官の意見は評価できると思います。
・この問題はかねてから三段階の方法によって合憲性を審査してきましたが、区割りが違憲であることはもちろんのこと、是正のための合理的な期間も完全に経過していると私は考えていました。前回の大法廷判決で一人別枠方式が批判されたにもかかわらず、前回選挙と同じ区割りで選挙が実施されたからです。区割りの審議にとりかかる速度があまりにも遅い。そのため反対意見に賛同し、多数意見には賛同できません。
・多数意見は「国会においては,今後も,新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要がある」などと述べておりますが、最高裁は従前より国会に対してかかる注文をつけていたわけで、国会が是正に向けた取り組みを真摯に行うとは到底考えられません。より踏み込んだ判決が求められていたと考えます。

(2)細田博之・自民党幹事長代行のコメントについて
・判決文をまともに読んでいないと思わざるを得ません。多数意見も区割りそれ自体は違憲だと断じており、国会に対して是正を求めているのであって、政府与党の幹部がかかる発言をするのは信じられません。

参院選の結果を受けて

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昨日(2013年7月21日)、第23回参議院議員通常選挙が投開票され、その結果、自公政権が勝利した。
与党は参議院で安定多数をとった。改憲勢力が2/3の議席までにはいたらなかったものの、かかる政党の議席増大の意味は大きい。

私は政治的には(たぶん)無党派層であるが、恩師である上脇博之先生の考え方に共感しつつ、河野太郎さんも好きであり、のらりくらりとした人生を送っている。
今回の選挙では、自民党は危ないと考えて、改憲に反対する候補者や政党に投票した。知り合いにも、自民党への投票だけはやめたほうが良いと呼びかけた。
あのような改憲試案を、まともな顔をして提案する気が知れないのである。

今回の選挙では、はじめてネットによる選挙運動が解禁された。
HPやブログのほか、TwitterやFacebookなどSNSでの投票の呼びかけにも接したが、それが果たして効果的だったか。

また、期日前投票による投票者数が過去最大になったにも関わらず、投票率は低い結果となった。
これらの事実は非常に興味深いし、いわゆる一票の格差の問題にも注目している。
選挙区制がもたらす民意の歪曲、という上脇先生の研究内容にも関心があり、近いうちに先生が分析をされると思われる。

いま一番の関心は、今後の改憲の動きである。今後の政治情勢において、もちろんアベノミクスやTPPの話は問題であるが、最重要課題ではないだろう。
おそらく衆議院の解散はしばらくないし、任期満了まで選挙がないかもしれない。
与党が2/3をおさえている衆議院の状況を考慮すると、3年後に半数が改選される参議院選挙が、憲法改正の問題にとって一番重要な時となる。
野党の分裂や集合も起こるかもしれない。

それまでに護憲勢力は、細かな違いを乗り越えて結集しなくてはならないだろう。
他方、改憲勢力は、国民に対して真摯な態度で改憲案を説明する必要がある。
投票率を挙げる工夫、若者の政治参加を訴える必要性も感じる。

これからの3年間が、日本国憲法史上、なにより重要な3年間となるのではないかと考える。

働くために生きるのか、生きるために働くのか

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私たちは、働くために生きるのか、それとも生きるために働くのか。

働くために生きている人は、仕事に追いかけられているようである。
仕事に懸命になり、昇進や昇給を追い求め、世間体を気にする。
資格や学歴は大事だけれども、それが唯一の価値だと信じ込んでいる。

自分より収入の少ないものを卑下して、バランス主義を実践する。
労働者として認められている様々な権利を放棄してまで働く。
経済成長こそが至高の価値だと考える。

想像力がなく、国家や資本家の言いなりになる。まったく思考が停止している。

生きるために働く人は、働くこと、すなわち労働力を対価として金銭を得ることは、単に生きるための手段であると考える。
衣食住を満たすための、そして人生を充実させるための手段である。

だからこそ、生きる意味や生き方、充実した人生の目的などを追求してゆく。
運動をしたり、本を読んだり、家族を構成したり、あるいは堕落したりして。

この立場からは、仕事が何であるか、他者より収入が多いか少ないかは、なんら問題ではない。
もちろん自らに合った仕事であれば良いし、仕事に魅力を覚えることは望ましい。
しかし、仕事に命まではかけない。
「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」(ダグラス・ラミス)と疑問を呈する。

この立場に立つ者の中には、一点豪華主義に向かう人もあるだろう。

どちらの考え方が正解かは、人それぞれである。
ただし、いずれにしても想像力を豊かにすることが肝要であると言えよう。

富永が考える震災の教訓あれこれ

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東日本大震災の発生から2年が過ぎました。
当時私は京都に住んでおり、揺れを感じませんでしたし、幸い計画停電などにも無縁でした。

そして、このように一歩引いた立場で、時間を経たからこそ感じることがありました。
今回はそのことを少しだけ、取り上げたいと思います。

先日、ネット上で石碑の写真を見ました。
津波災害に遭った先人が、これより下に家を建てるなと記したもの。
それにも関わらず、私たちは海沿いに家を建てて生活してきました。

このことを取り上げて、しかし今回の場合は数多くの動画が撮影されており、今後はこのようなことはないという意見がありました。

私はそうは考えません。

過去のことは次第に忘れ、自分に都合の良いように物事を考える性質が、人間にはあると考えるためです。

石碑(文字)よりも動画(映像)のほうが真実を如実に表しており、影響力は大きい。
その貴重な震災の動画ですら、見られなければ意味は無いし、ニュースで見たとしても、その衝撃は薄れてゆく。

実際に被害に遭われた方は身を持って体験しており、記憶はそう薄れるものではない。
けれども、それを語り継いでゆけるのか、感覚が鈍らないか。

石碑も、建立された当初は人びとに大きな影響を与えたはず。
悲しみが語り継がれていかれたはず。
けれども、何年も何十年も経って、技術の進歩を過信してしまった感があります。

それでも、なお動画の力は大きいと思う。
YouTubeで数多くの、市井の人びとによる動画を見て衝撃を受けた私の実感です。
だからこそ言いたい。きちんと動画の管理がなされているのか、と。

テレビ局の動画は、当然保管されているでしょう。
専用のカメラであれば最低でも1080pのフルHD画質だろうし、偶然撮影していた記者の動画であってもデータがテレビ局にあるはず。

問題は、先に挙げた、YouTubeなどの動画投稿サイトにアップロードされたもの。

震災直後は、アップロードされた動画がニュースで紹介されることが多かったように記憶しています。
それは、なんとか難を逃れ、必死の思いでスマホやデジカメで撮影した人びとの手によるもの。

そこで思うのは、動画データが撮影者以外の者によって、特にNHKなどのきちんとしたテレビ局によって保管されることが必要だという点。
と言うのも、一般人による動画は、後にサイトから削除されることがあるし、データの管理もテレビ局ほど厳重とは言えないため。
YouTubeのサービスが未来永劫、残るとも思えません。

もちろん著作権の問題はあるでしょうが、動画サイトから借りて放送できるのであれば、大元の動画データを丸ごと(全編)保管することもそれほど問題はないはず。
そして出来る限り、同じ動画であれば画質の良い(480pより720p、720pより1080p)データを残すことが重要。
解像度は高いほうが後に繋がるからです。

人びとの記憶それ自体を丸ごと残す技術がない以上、せめて貴重な数々の動画を管理、保存し、
特集番組で定期的に放送するなど適切に運用してゆくことが、IT社会に生きる私たちの義務だと思うのです。

※2013/03/16追記
投稿後、以下の記事に接した。

NHK NEWS WEB 震災記録をデジタルで後世に

震災関連の写真・動画データなど集めた「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ」、3月7日いよいよ正式公開へ (japan.internet.com) – Yahoo!ニュース

朝日新聞デジタル:震災の記憶・記録、後世に 試行錯誤する博物館や美術館

基本的には賛同できるが、動画投稿サイトへ投稿された元データが、丸ごと保存されているのか気になるところ。

Nothing gets me down

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(サイン本は、L・ダイアモンド=M・F・プラットナー編、中道寿一監訳『シビリアン・コントロールとデモクラシー』〔刀水書房、2006年〕)

 

北九州市立大学の中道寿一教授が退職されることを知った。たしかに年齢から言えば、この3月で定年退職である。
私は在学中、中道先生にたいへんお世話になった。この場では語り尽くせぬほどである。
法学部生だったけれども先生のいる学科とは違ったから、ゼミ生だったわけではない。しかし先生の講義は受けたし、よく話をさせていただいた。
そんな中道先生からいただいた言葉として、「Nothing gets me down」がある。

「ペシャンコにされてもへこたれないぞ」とは、社会的圧力に屈しそうになったとき、いつもジェレミー(筆者注:ナット・ヘントフ著=片桐ユズル訳『ペシャンコにされてもへこたれないぞ』〔晶文社、1971年〕に出てくる主人公の名前)が呪文の如くつぶやいていた歌の一節である。
今日の管理社会化の傾向に対して、一人では変えうべきもないとすれば、その時機の来るまで、譲ることのできない自己の領域=自分自身の原則を再確立しつつ、兎にも角にも耐え続けなければなるまい。その間、ジェレミーのつぶやいていた呪文「ペシャンコにされてもへこたれないぞ」(I’m really dragged but nothing gets me down.)を、私も繰り返し自分自身に言い聞かせるつもりである。
(中道寿一『政治学断章』70頁〔南窓社、1992年〕より)

このブログおよび個人HPの冒頭には、副題として、先生からいただいた言葉「Nothing gets me down」を付けている。
この前のサイトリニューアルの際、川島武宜教授の文章から差し替えた。
お気に入りの言葉として登場していただいたわけである。

折しも昨年、日本では政権交代があり、自民党を中心とする政権が誕生した。憲法改正が声高に叫ばれている昨今である。
今後の予想される政治状況などを鑑みると、ペシャンコになってガックリな気分になることがある。日々の生活における些細な出来事によって、参っちゃうなーと思うこともある。けれども、この言葉を励みに、これからの人生を歩んでゆきたいと考えている。

中道先生、ありがとうございました。

有斐閣「書斎の窓」最新号の紹介

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六法全書などの出版で知られる、法律系専門出版社の有斐閣は、毎月、小冊子のPR雑誌「書斎の窓」を発行している。
今月号は、上脇先生の対談記事が掲載されるなど、興味深い内容が多かった。他の内容とあわせて、ぜひ一読をお勧めしたい。

有斐閣「書斎の窓」2012年4月号

01〜02頁 表紙、目次
03〜12頁 上脇博之=富永広紀「対談:書斎の窓と社会の窓との憲法学的差異」
13〜18頁 比山節男「論説:法律による行政の原理主義タリバン」
19〜22頁 浦部法穂「書評:上脇博之『おならの憲法問題』を読む」
23〜28頁 岩本誠吾「随筆:国際政治におけるイランアフガン聴かせてバラライカ」
29〜30頁 阿部泰隆「判例紹介:君も歩けば行政法に当たるとされた事例」
31〜32頁 編集後記、裏表紙

忘れられない人

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誰にも、忘れられない人、というのがいると思う。
友人や恋人、あるいは会ったことすらない人かもしれない。
ふと思い出す、あの人の言動。今は何をしているのだろうか、などと考える。

気軽に会える人は、なかなか、忘れられない人、とは言わないだろう。
とても印象に残っているけれども、今はもう会うこともないだろうと思う人。
そんな、忘れられない人。

今日は久々のブログ投稿だけれども、ふと思い出したから、ぼくにとって忘れられない、ある人の話をしよう。

いつだったか、はっきりと日にちは覚えていない。ここ1、2年のことである。
その時ぼくは、実家のある横浜に帰省していた。
知り合いと会う約束をしており、そのため電車に乗っていた。

平日夕方の東海道線、おそらく上り電車。人はまばらで、立つ人もちらほらと見えた。
数駅しか乗らないこともあり、ぼくは出入り口の近くでぼんやりとつったっていた。
反対側の出入り口付近では、学校帰りと思われる高校生が携帯電話をいじりながら、友人と喋っている。
ぼくは携帯電話で、これから会う知り合いに送るメールを打っていた。

そんなとき、今日は蒸し暑いですね、というような話を、目の前に立つ男性の方がしてきた。
60歳前後だろうか、杖を持っており、頭髪が少し寂しげだった。
人なつっこい笑顔で、ぼくのことを見つめてくる。
「そうですね、参っちゃいますね」。軽く返事をする。

男性は「お兄ちゃん学生さんやろ」と聞いてくる。
「よく分かりましたね」と答えると、すぐさまこう続けてきた。
「法律か何かの勉強しとるやろ」
そこまで当てられると笑うしかない。

男性はその後も「弁護士か何かを目指しとるわけやな、あんたは長男のはずや、弟が二人くらいおる」と予想を的中していった。
ぼくは思わず尋ねた。「どうして分かるのですか」。
男性は「そんなん顔を見れば分かるもんや、それよりちゃんと勉強して両親を大切にせいよ」と言う。
知らない人から激励を受けるのも面白いな、と考えつつ「はい、ありがとうございます」と真顔で答える。

しばらくして目的の駅に着いたぼくは、男性に会釈して電車から降りた。
ホームに降り立って出入り口を振り返ると、男性はぼくのことを見つめ、笑っていた。

その後会った知り合いに、開口一番、男性の話をした。
知り合いは、そういう人もいるんだねえ、とそっけない。

はたして、あの時話した男性は、いったいどういう人だったのだろうか。
ぼくは忘れているけれども、男性はぼくのことを知っていたのだろうか。
そんな、忘れられない人のことを、あれこれと想像してしまう。
勉強していてくじけそうになったとき、なぜだか、あの笑顔を思い出してしまうのである。

上脇教授の新刊『おならの憲法問題』を読む

上脇博之『おならの憲法問題』(日本機関紙出版センター、2011年)が出版されたので、早速購入した。
先生の著書は、『議員定数を削減していいの?』(日本機関紙出版センター、2011年)に続くもので、単著としては6冊目である。

本書は憲法研究者としては異例の、おならに関する憲法問題を扱ったものである。目次は以下のとおりである。

はじめに

第1章 おならとは何か
 第1節 おならのメカニズム
 第2節 おならの成分
 第3節 おならの臭い
 第4節 おならの噴射力

第2章 おならと憲法との関わり
 第1節 おならをするとはどういうことか
 第2節 人権論としてのおなら
 第3節 13条説、25条説、折衷説の対立
 第4節 マラウイ共和国のおなら禁止法案と軽犯罪法

第3章 おならの憲法問題
 第1節 問題の所在
 第2節 トリーペルによる分類
 第3節 二重の基準論その1 – 美人はおならをしないという誤解
 第4節 二重の基準論その2 – おならをしていないのに周りからしたと誤解される事例
 第5節 立法裁量論を採る最高裁
 第6節 私見

第4章 おならとマスメディア
 第1節 生放送とおなら
 第2節 おならの報じ方

第5章 おならと国会議員
 第1節 政党助成金とおなら
 第2節 議員宿舎とおなら

人はおならで空を飛べるか(結びにかえて)

ひと通り読んでみた感想を、先生の文章を引用しつつ、ここに記しておこう。

まず第1章では、おならについての仕組みを、ごく簡単に説明している。本書はおならと憲法問題について扱った研究書であるが、最初におならについての正しい知識と理解を確認している。医学書などを参考に、先生なりのオヤジギャグを交えており、導入部分から非常に読みやすいものとなっている。

次に第2章では、おならをするということが、人権として保障されるのか検討している。
先生は最終的に「おならの臭いには十分な配慮をすべきものの、おならをしなければ健康に悪影響があ〔る〕。……おならをするとスッキリして気持ち良いことは幸福追求の一形態であり、そうであるならば基本的におならをする権利があると解すべきである」(45頁)と言われる。
その上で「外国人もおならをするのであるから、日本国民のみに限られず、外国人にも保障される権利」だと解される。ただし「いわゆる公共の福祉に配慮すべきこと勿論であり、……〔おならをすることが許される場合と許されない場合の〕区別の基準が問題となる」と指摘される。私もこの点は同感である。

そして第3章では、本書の中心部分となる、おならの憲法問題が扱われる。第2章の後半が問題提起だったのに対して、第3章ではその検討がされるという構成である。
はじめに法学者トリーペルの四段階説が紹介される。それによれば憲法とおならの関係は、①敵視(Bekämpfung)、②無視(Ignorierung)、③承認及び合法化(Anerkennung und Legalisierung)、④憲法編入(verfassungsmassige Inkorporation)の四段階に分けられるという。日本では②の無視の段階にあり、マラウイ共和国のおなら禁止法案は①の敵視の段階にしようとするものだと言われる。そして先生は、少なくとも日本では③の承認及び合法化の段階にすべきであると主張される(97頁)。
続いて先生は、昨年の最高裁判例(最判平成22年4月1日民集64巻41号410頁)において最高裁が展開した立法裁量論を分析され、批判される。本書執筆の動機は、この判例であったという。「議員定数不均衡の問題には珍しく積極的な最高裁が、本件において他の多くの行政訴訟と同じく立法裁量論に逃げるのは、おならの本質を見誤っており、きわめて問題」(141頁)と厳しい。

続く第4章では、おならとマスメディアの問題を簡潔に指摘し、第5章では国会議員の問題とおならの問題を取り上げている。いずれも今までにはない切り口で検討を加えており、第3章のボリューム感に負けない叙述となっていると思われる。

本書はまさに、今までにない新しい議論を呼び起こす、問題提起の研究書である。しかしながら先生は、ドイツでの議論を踏み台にして日本独自の議論を展開しており、非常に読み応えのある内容となっている。一読に値すると考える。

なお、出版社による紹介のページはコチラを参照されたい。